実はCATツール指定案件を受けたのは今年6月に入って初めてだったんです。それまでは自由なものばかり。ツール指定って思ったよりもきついんですね。
エージェントとしては、ほぼ毎回CATツールで翻訳の準備をして、依頼して、CATツールのデータで納品される、それが当たり前のように10年以上携わってきました。
もちろん、完全流用でロックされているところがあって、それどころか8割9割ロックされていることもあって、部分的に翻訳するのってやりにくいだろうな、嫌だろうなと思いつつ手配することも多々あります。スクロールするのだってばかばかしいくらい。
これ、自分でやってみると、想像以上にきついし、何やってんだろうっていう気持ちになるんです。
翻訳対象だけフィルタリングすることもできるでしょう。でもそうすると前後が見えない。対象に飛んでからフィルタを解除すれば見えるかというと、いちいちそんなことしていられない。
だいたい、CATツール指定の案件というのは安くなりがちなんです。それなのに必要以上に手間をかけているわけにはいかない。でも手間をかけないとできない。なんなんだろう、何が翻訳支援だ、と思ったりします。
ところで、安くなりがちな理由ですが、もちろん皆さんご存じのとおり、単価に対して流用率に応じた割合(%)を掛けるためです。これもソースクライアント、翻訳会社、翻訳者で感じるところが違います。
ソースクライアントは、「原文が似ていれば安くなるのは当たり前でしょう?」と思っているはずです。
翻訳会社も同じく、原文が似ていれば安くなるのは当然と考えているかもしれません。それに、そうしないと他社との競争に勝てません。
翻訳者は、「安くされているけど、全然楽じゃないよ」と思っているはずです。
先日ご依頼いただいた案件には60%台や70%台がそれなりにありました。実際に翻訳していると、60%台や70%台はたいてい使い物になりませんでした。新規と同等の労力がかかりました。
いずれにしても、CATツールは自分の利便のために使うのならまだしも、指定されて、縛られるとしたら、翻訳者としてよいところはあるのでしょうか。ないでしょうね。
翻訳の候補についても問題があると思われます。最近は機械翻訳や、機械的な判断結果を参考にする設定もあるようです。これについては万が一状況を整理出来たらいずれ書くかもしれません。
CAT、つまりComputer Aided TranslationとかComputer Assisted Translationという名前もどうかと思ってしまいます。何もAidされていないし、Assistされてもいない。やりにくくなって値切られて、いったい何なんだよと、そんなことを思いつつ世は更けていきます。
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