「うまい、安い、早い」について考えてみます。あ、牛丼ではなくて翻訳のQCDのはなしです。ちなみに私は牛丼だったら吉野家が好きです。
「うまい、安い、早い」をQCDに当てはめる
「うまい、安い、早い」をQCDに当てはめてみましょう。
- うまい = Q(Quality:品質)
- 安い = C(Cost:価格)
- 早い = D(Delivery/Time:納期・時間)
牛丼も品質管理も同じだったんですね。
QCDはどれも必要
QCDのどれか一つでも欠けていると、顧客の満足を得られません。
- Qに問題
- テレビでも取り上げられていた食べ放題。レポーターは「安いし回転率がいいから待たないし、できたて熱々でおいしい」なんて言ってたけど、冷めているし全然おいしくない。
- Cに問題
- 人気のテーマパーク。週末は混んでいるけど、平日だから並ばずにアトラクションに乗れたし楽しかった。でも入園料高過ぎない? どこも値上げしてるからって、便乗だよね。1回来たからもう来なくてもいいかな。
- Dに問題
- 日曜日のデートに新しい服がほしい。流行の服がバーゲンでお買い得。金曜日に届くと言うから注文したのに、遅れて月曜日以降の配送になるだって。もういらない。
翻訳で考えてみましょう。
- Qに問題
- 安いし、納期は守ってくれるんだけど、間違いが多いんだよな。もう出すのはやめよう。
- Cに問題
- 品質はよいし、納期より早めに上げてくれるんだけど、高いよな。予算もないし、他の翻訳者(翻訳会社)に出してみよう。
- Dに問題
- 品質はよいし、安いんだけど、いつも納期に遅れるんだよな。こんな対応では信用できないし、出すのはやめよう。
QCDのバランスを考えてみる
QCDにはそれぞれのバランスが必要です。まず次のような正三角形があります。
どれか一つが伸びれば、それに比例してほかの2つも伸び、正三角形を保持するのが理想です。
「安く」と言われてC(価格)の辺を短くするのであれば、ほかの要素も短くしなければバランスが崩れます。つまり翻訳作業にかける時間を短縮し、品質も最低限必要なポイントのみにしぼります。
急ぎの案件でD(納期・時間)の辺を短くするのであれば、品質を最低限必要なポイントのみにしぼる(あるいはどうしても必要な部分のみ翻訳する)のと、それに伴って価格も下げます。
「いつもと同じ分量(あるいは品質)を短納期で」と言われる場合は、時間に対する要求が高くなったと考え、D(納期・時間)の辺を伸ばし、特急料金として価格も上げます。品質も短期間でいつもと同じものを求められるため、Q(品質)の辺も伸ばします。
「品質を落として」と言われることはまずありませんね。
翻訳会社と翻訳者のすべきこと
「安く」「早く」の依頼に対して、ソースクライアントに事前に確認すべきことがあります。譲れない部分と手を抜いてもよい部分です。
価格や翻訳期間を削るためには、犠牲にしなければいけないものもあります。3つの要素のうち残る一つ「品質」です。このとき重要なのは、「品質を下げる」ではなく、「最低限確保しなければいけない品質」について話をすることです。ソースクライアントにもポジティブに受け止めてもらうのです。
ソースクライアントとのこのような調整は翻訳会社が行うべきことです。翻訳会社は案件ごと必要な品質レベルを確認し、それを翻訳者に伝えなければなりません。
翻訳者は、その案件で求められる品質レベルを満たす翻訳を実現します。予算や期間が厳しい案件であるにもかかわらず、必要な品質レベルが不明確であれば、翻訳会社に確認しましょう。明確な回答がなく、しかも納品後に無茶なクレームが戻ってくるようであれば、その翻訳会社との仕事は考え直した方がよいかもしれません。
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