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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

Trados StudioのタグIDって不都合しかないと思うのですが

trados-studio-tag-id

SDL Trados Studioでは、タグやプレースホルダにタグIDという一意の識別子が割り当てられるようになりました。これって困ることないのでしょうか。ちょっと試してみました。

画面ショットはすべてSDL Trados Studio 2014 SP2です。

1. タグIDとは

次のような文が記載されたWordファイルがあり、Trados Studioで開いてみます。

A bold style looks like this, and an italic style looks like this.

[タグの内容の表示]で見てみます。
view-option-full-tag-text
するとこのように表示されます。
tag-1-full-tag-text

次に[タグ ID]で見てみます。
view-option-tag-id
するとこのように表示されます。
tag-2-tag-id

このように、各タグに対して上から順番に番号が割り当てられます。[タグの内容の表示]で翻訳をしていたとしても、それぞれのタグは番号の情報を持っているのです。

2. 訳文へのタグの挿入方法による違い

訳文にタグを挿入する方法はおおよそ次の3通りになると思います。

2.1. 原文分節のタグをコピー

これが恐らく推奨されている手段であると思われます。翻訳支援ツールでの基本は、やはり原文と訳文でタグを一致させることです。同じ分節にある原文のタグを訳文の正しい位置に挿入することで、タグIDも原文と訳文で同一になります。

[タグの内容の表示]での表示例
tag-full-text
[タグ ID]での表示例
tag-id1

2.2. 他のセグメントのタグをコピー

Trados 2007以前のバージョンを使ったことがあれば、よくやった方法ではないかと思います。TagEditorでは、セグメントを開かずに訳文の修正をすることもあったのではないでしょうか。頻出するタグなどはコピーしておいて、何度もペーストしたものです。

ところが、Trados Studioではタグ一つ一つに一意の識別子が割り当てられているため、別のセグメントからコピーしたタグはタグIDが異なるのです。

2.3. Quick Insertやショートカットを使う

[ホーム]タブのQuick Insertやショートカット(Ctrl+BやCtrl+Iなど)を使う方法です。しかし、この方法で挿入したタグにはタグIDが割り当てられません。

次の画面では、原文のタグにIDが割り振られているのに対して、訳文のタグはBoldとItalicとなっています。

[タグの内容の表示]での表示例
tag-full-text
[タグ ID]での表示例
tag-id2

3. サンプルファイルを見てみる

Trados Studioをインストールすると、あらかじめサンプルファイルが用意されています。[プロジェクト]ビューの「Sample Project」です。原文言語はEN-US、訳文言語はFrench、German、Japaneseがあります。訳文が入っているのはGermanだけなので、これ以降は英語-ドイツ語のペアを例に見ていきます。

[ファイル]ビューを見ると、5つのsdlxliffファイルが並んでいます。ソースファイル形式はdoc、pptx、xml、docx、そしてdocがもう一つ。
sample-proj-1-project-view

一番下の「TryPerfectMatch.doc.sdlxliff」をエディタビューで見てみます。ファイル名の通り、PerfectMatchをかけたサンプルであることが分かります。(ちなみに、フリーランス版ではPerfectMatch機能は利用できないようです。)

分節番号3を[タグの内容の表示]で見てみます。boldやitalicタグがありますね。
sample-proj-2-editor-view1

次に[タグ ID]で見てみます。タグの情報が分からなくなりました。
sample-proj-2-editor-view2

ここで注目すべきは、原文のタグID「pt10」と訳文のタグID「pt6」に違いがあることです。これは問題ないのでしょうか。以降検証してみます。

4. サンプルファイルからTMを作って当ててみる

上記の通り原文と訳文でタグIDの異なるバイリンガルsdlxliffから翻訳メモリを作成してみます。
sample-proj-3-created-tm
当然ですが、翻訳メモリでも原文のタグ「pt10」と訳文のタグ「pt6」の違いが見られます。

この翻訳メモリをサンプルプロジェクトの1番目のファイル「SamplePhotoPrinter.doc」に当ててみます。

[ファイル]ビューを見ると90%が翻訳済み、10%が未翻訳のようです。
test-proj1-1-project-view

[エディタ]ビューを見ると、タグIDの異なった分節番号3だけ未翻訳です。
test-proj1-2-editor-view1

この分節をアクティブにしてみましょう。
99%マッチにはなりますが、IDの異なるタグが挿入されていません。
test-proj1-2-editor-view2

5. サンプルファイルのタグを修正、TMを作って当ててみる

「TryPerfectMatch.doc.sdlxliff」のタグを原文と訳文でタグIDが一致するように修正します。
corrected-1-sdlxliff

修正したバイリンガルsdlxliffから翻訳メモリを作成してみます。
corrected-2-sdltm

この翻訳メモリをサンプルプロジェクトの1番目のファイル「SamplePhotoPrinter.doc」に当ててみます。

[ファイル]ビューを見ると100%翻訳済みとなっています。
test-proj2-1-project-view

[エディタ]ビューを見ると、タグIDが修正されたため無事ContextMatchとなっています。
test-proj2-2-editor-view

6. QuickInsertやショートカットでタグを挿入したら

これもよくありそうなので、一応試してみました。

「TryPerfectMatch.doc.sdlxliff」の訳文のBoldタグをCtrl+Bで挿入してみました。
「pt10」の代わりにBoldとなっています。
quickinsert1

翻訳メモリを作成してみます。Ctrl+Bで挿入したタグはIDではなくBoldとなっています。
quickinsert2-tm

この翻訳メモリをサンプルプロジェクトの1番目のファイル「SamplePhotoPrinter.doc」に当ててみました。
すると、原文はタグID、訳文はBoldタグと不一致の状態ですが、ContextMatchとなりました。
quickinsert3

7. まとめ

タグIDが異なる場合、流用で問題となる可能性があることが分かりました。

QuickInsertやショートカットでタグを挿入した場合、タグIDは割り当てられませんが、問題なく流用できる場合があることも分かりました。ただし、分節内にタグが3つ以上ある場合や、その中でいくつのタグが原文と異なる場合問題となるかなど把握するには、より詳細な検証が必要と思われます。

タグIDという考えがTradosに持ち込まれた背景などは分かりませんが、翻訳する側や翻訳会社からすると、現状では利点はないように思われます。

QuickInsertやショートカットは確かに存在するわけで、実在する機能を使用するとタグの不一致が発生する仕様であることも理解困難です。

また、SDLにより用意されたサンプルファイルにおいてタグIDの原文訳文間の不一致があることは何か意図があってのことでしょうか。私には笑い話としか思えません。

今回の内容で不明などありましたらご連絡頂ければと思います。可能な限りで本記事を分かりやすく更新したいと思います。


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