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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

翻訳メモリの適切な管理と運用、定期的なメンテナンスは必要

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翻訳メモリを使って翻訳する、今や当たり前のこととなっています。しかし、長きに渡り蓄積した翻訳メモリを使っていると、さまざまな問題もまた蓄積します。そこで必要になってくるのが翻訳メモリの定期的なメンテナンス。でも、そんな適切な管理・運用ができている会社はないのではないでしょうか。

翻訳メモリの定期的なメンテナンスはなぜ必要か

翻訳メモリをメンテナンスする必要はなぜあるのでしょうか。まず考えられるのは、長きにわたって複数の翻訳者がかかわることによる訳文の不統一の問題です。

  • 訳文スタイルの違い(文章単位)
  • 訳語選択の違い(単語単位)
  • 用語の違いが発生する(専門用語と一般用語にかかわらず)

次に、時の流れによる問題があります。

  • 表現や用語は陳腐化する
  • 言語によっては正書法が新しくなることがある

定期的なメンテナンスをしないとどうなるか

翻訳メモリを使って翻訳する際、よくあるのが「100%マッチは変更しないで」「新規とファジーだけ翻訳して」というものです。しかし、メンテナンスをしないままこのような部分翻訳を繰り返すと、次のようなことが起こります。

  • 異なる訳文スタイルの混在
  • 訳語選択のユレ
  • 用語のユレ
  • 時代遅れの表現や用語が混入する
  • 誤訳はそのまま流用されてしまう

なぜ定期的なメンテナンスをしないのか

さまざまな問題が起こりうるのに、なぜ定期的なメンテナンスは行われないのでしょうか。翻訳メモリのメンテナンスを妨げる要因はなんでしょうか。

費用

これだけです。実際には工数(時間)もかかりますし、事前にメンテナンスする方向性を定めなければいけないなど、苦労は多いです。しかし、一番の決め手になるのは「お金」ではないでしょうか。

翻訳メモリを管理するのは、ソースクライアントか翻訳会社です。

ソースクライアントは1件1件の翻訳を安く上げることしか考えていません。それだけではないかもしれませんが、常日頃見ている限りでは、費用が一番の関心事であると感じられます。普段せっかく安く買い叩いているのに、費用をかけて、しかも相当な額をかけてまでメンテナンスなどしたくないでしょう。

翻訳会社は、ソースクライアントからお金がもらえない限りは、何もしないし、できないものです。安く買い叩かれて、利益を出すのにヒイヒイ言っているのですから、余計な作業に余計な出費はできません。

困るのは誰か

では、定期的なメンテナンスをしないで翻訳メモリを使い続けると、一体誰が困るのでしょうか。

まず考えられるのは翻訳者です。

翻訳者は部分翻訳という非常にやりにくい作業を強いられます。前後のつながりもありますから、翻訳対象だけでなくその前後も見ます。しかし、その100%マッチの訳文の品質や、翻訳メモリが提示するファジーマッチの品質が低かったらどうでしょう。翻訳対象箇所を最適な訳にすると訳文にユレが生じます。かといって、あえて品質を低く訳すなどできません。ここでどうすべきか悩みます。

このとき、翻訳メモリに準じて品質の低い訳を入れれば、全体の統一感はそれなりに保たれるかもしれませんが、やはり品質は低くなります。翻訳対象箇所だけすばらしい訳文を入れたとしても、全体の統一感はなく、通して読むと不自然なものになります。いずれにしても品質は低くなるのです。

次に困るのは、その訳文を読む読者、あるいはエンドユーザーです。

ソフトウェアであれば、UIが分かりにくければ使いにくさに直結するでしょう。取説であれば、使い方が分からず困って読んでいるのに、訳文が間違っていたり、書いてあることが分かりにくければ、それだけでストレスになります。その結果、製品の評価は下がるでしょう。

まとめ

ソースクライアントであれ翻訳会社であれ、翻訳メモリを絶対として運用するのであれば、定期的なメンテナンスは必要です。メンテナンスもしない翻訳メモリを渡して、単価を下げさせ、その結果訳文の品質がどうとか言うのはフェアではありません。

それでもメンテナンスをしないのであれば、翻訳メモリを絶対的なものと考えるのをやめるべきです。翻訳の効率化や翻訳期間短縮の役に立つものくらいに捉えるべきです。つまり翻訳者は翻訳メモリを下訳のように使い、質が悪ければ100%マッチでも見直して必要であれば修正します。100%マッチであろうが新規翻訳であろうが作業対象とし、マッチ率ごと単価を変えるのをやめます。翻訳期間もそれに見合っただけ確保します。それが、本当の翻訳というものになるのではないかと考えます。

ただ、現状翻訳メモリを使っているクライアントや案件が、本当の翻訳というものに改善する見込みはないと思われます。せめてメンテナンスを検討してほしいものです。


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