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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

過去納品されたひどい翻訳の背景を考えてみた(1)

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その昔大手翻訳会社から納品された英日翻訳、ひどいものがありました。翻訳会社の大小は関係ありませんが。あまりにひどいものを見ると、なぜこんなものが納品されるのだろうと不思議に思ったものです。でも何らかの理由があったはずです。

翻訳会社から納品された翻訳をチェックしていると、まったく問題ないということはあまりないかもしれません。問題の種類や重さは様々です。

直接依頼している個人の翻訳者さんの方が圧倒的に安心感はあります。

その昔、コーディネーションの仕事に就いて間もないころ、翻訳会社から納品されるのに訳文の質が悪過ぎるってありえないと思っていたんです。その根拠は、翻訳会社に登録している翻訳者さんはトライアルに合格しているはずだからです。そして各案件の納品前には、基本的に翻訳会社内でチェックが入ると思っていたからです。

とあるメーカーさんの社内文書を英日翻訳する案件でした。PPTで30スライドか35スライドだったと記憶しています。そのメーカーさんの製品や中心的な技術をある程度知っていないと難しい内容だったかもしれません。

類似したものとまではいきませんが、社内技術文書の過去の英日翻訳ファイル、また当該案件の技術に関する資料も頂きました。資料の分量は多過ぎず、それでも必要な技術や用語をある程度把握できる内容であり、やりやすい案件であるとの感想を持ち開始しました。実はソースクライアントの発注者は知り合いで、翻訳のことを多少なりともご存知の方だったのです。

ある程度の作業期間が確保できたので、翻訳会社さんにも余裕のある日数で依頼することができました。単価も取説などと比べて高めとのことでしたが、承諾しました。

予定通りの期日に納品されました。読み始めたところで目を疑いました。日本語として理解しにくかったのです。誤字と誤訳もボリュームから見てかなりな割合でありました。もちろん用語についても資料をご覧いただいたとは思えない状態でした。

結局全面的な見直しが必要であると判断し、翻訳会社に見直しを要請するにも不安があり、いったん全部自分で確認することにしました。目の前にある訳文がまるで信頼できるものでない以上、確認と言うよりは全文を自分で翻訳し直すことにしました。この確認により、もともとあった日程の余裕も消え去りました。

自分で翻訳をするため調べ始めると、必要な情報が簡単に検索結果として挙がってきました。製品の中心的な技術とは言っても、おおかたはプレスリリースやメーカーさんのウェブサイトで公開されていたためです。この段階で、対応頂いた翻訳者さんは下調べなどもせず、字面だけで訳していたことが分かりました。

さて、自分で訳しながら、納品された翻訳結果にコメントを入れ、翻訳会社に質問とフィードバックと言う形で連絡しました。回答は、翻訳者さんは当該製品の翻訳にも経験があるとのことで、指摘箇所は技術的な内容を理解しないまま直訳したため理解しにくい訳文になったのではないかということでした。また翻訳会社さんでも1名が全体に目を通してチェックしていたということでした。

この回答には不思議な点が2つあります。

まず、当該製品の翻訳に経験があるのに、技術的な内容を理解しないで直訳したというところ。経験があるのなら、技術を理解しないで直訳するなんてありえないと思うのです。いつも翻訳しているものより技術的に突っ込んだ内容であったとしても、意味不明な訳文まで落ちるものでしょうか。

次に、翻訳会社さんで1名が全体に目を通したというところ。だって、日本語として意味が分からない訳文なんです。読んでいるはずありません。目を通したって、ファイルを開いて、全ページをスクロールして目にしただけということだったのでしょうか。

正直なところ、余りにも安く依頼してしまうと低品質でもやむを得ないかと思ってしまうところもあります。この金額では実力や技術力の高い翻訳者さんはむりだろうな、と。きっと経験の浅い方にいらいされるのだろうな、と。しかし、この時の案件はそれなりの単価だったのです。それにもかかわらずこの品質って、と驚いたわけです。

この案件以降、翻訳会社さんでは品質を保証することはできないし、場合によってはしていないのだろうなと思うようになりました。割り切って発注するようになったのです。諦めと言った方がよいかもしれません。

以前も翻訳品質は翻訳会社ではなく翻訳者で決まると書きましたが、実際そうなのです。確認工程をスキップしたり、手を抜いたりしたことが明らかで、意味不明な訳文というレベルの問題はもしかしたらISO17100を取得する翻訳会社が増えればなくなるのかもしれませんが。

あと一つ、この時の翻訳で不思議だったことがあります。訳文の最初から問題だらけだったのですが、後半のとあるページから急にこなれた日本語になっていたのです。翻訳者さんを2名で対応頂いたのかと翻訳会社さんに質問してみましたが、1名とのことでした。

ちなみに、こなれた日本語と言っても問題があります。メーカーさんの社内文書なのに、妙に宣伝口調だったのです。言ってみればマーケティングというか、消費者向けのカタログなどの表現と言うか。前半とのバランスの悪さも問題ですが、対象読者にふさわしくないという点でも、こなれていたとしても問題の残る翻訳でした。

翻訳会社では訳文の品質を保証できないことは分かりましたが、トライアルに合格して登録されたはずの翻訳者さんが、なぜこのようにひどい翻訳をしたのか次回考えてみたいと思います。


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