会社にいると、断るべきでも断れない仕事ってあります。最近、短納期で原文の程度が低かった日英翻訳がありました。どうにかして断るべきだったと後悔しています。
以前、「『うまい、安い、早い』翻訳のQCDを考えてみる」という記事でQCDはバランスが大切と書きました。バランスは大切ですが、バランスがとれていてもやるべきでない場合もあるのですね。
「品質はそこそこで構わない」「金額もそこそこ」「短納期」というような、ある意味QCDのバランスがとれた仕事があったとします。このような仕事は受けるべきでしょうか。
仮に受けたとします。とりあえず短い期間内で翻訳を終えます。でも確認する時間はあまりありません。これで満足できるという人は翻訳者にはあまりいないのではないでしょうか。
このような仕事が、翻訳コーディネーターの私の下にやってきました。会社員ですから、しぶしぶ手配します。翻訳手配する際、こちらでも確認しますから、となぜか当たり前のことをわざわざ強調して伝えつつ手配しました。
上がってきた翻訳を見た途端、目につくものがありました。それは訳文全体に対する不安を呼ぶようなレベルのものでした。短納期で原文の質が悪かったとはいえ、あんまりだと思うものだったため翻訳者に問い合わせると、「そこは確かに仰る通りかもしれないです。でも他はちゃんとできています。短納期でできる範囲では問題ないところまでできていると思いますよ」とのこと。確かに短納期だったし、しょうがないか、と。
私も時間の許す範囲で確認と修正をしてクライアントに納品しましたが、やはり気分が悪いのです。何か引っかかったまま納品するのって、本当に気持ち悪いんです。
Terry Saitoさんもブログ記事「無理な仕事を受けないからプロ」で「自分がQCDを保証する自信があるなら受ければ良いけれど、そうでないなら絶対に受けるべきではない」と仰っています。
翻訳者はもちろんのこと、コーディネートする側も、QCDを保証する自信がなかったら受けるべきではない、そんなことを実感した案件でした。
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