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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

翻訳を買う側の質より売る側の質

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翻訳を買う側の質低下について書いたところ、売る側の質低下についてご意見をいただきました。ごもっともです。わたしとしても日ごろ感じていることです。これについても書かないと平等でないというか、業界を俯瞰していればおのずと書くことになる内容です。

少し前、「恐れるべきは機械翻訳の質向上か買う側の質低下か」という記事を書きました。買う側の質低下については実際に感じていることです。ただし、買う側だけに責任を押し付けるのは公平ではありませんね。

これから売る側について書きますが、主にMLVという、ソースクライアントに一番近いところに陣取っている会社についての内容となります。

MLVについては、中の人、競合他社、翻訳者、というそれぞれの立場で見ています。いずれにしても、よい印象は持っていません。なぜでしょうか。これから常日頃思っていることを書きますが、それなりに近い位置から見聞きしたことを基にしています。

お客様は神様?

MLVはたいていソースクライアントと直接取引をする立場にあります。どれだけソースクライアントから仕事を取れるかに業績がかかっています。そのため、ソースクライアントに嫌われないように相当の気を遣っています。それが正しいかどうかは別として。

ソースクライアントは翻訳について専門的な知識を持っていません。(だからMLVや翻訳会社に頼っている、またMLVや翻訳会社が存在しているとも言えます。)そのため、ソースクライアントが翻訳の品質について妥当な認識を持っているかというと、必ずしもそうではありません。この点で、わたしの前回の記事は公平ではなかったと言えます。

では、翻訳の品質について誰が理解していて、誰がソースクライアントに意見し助言できるのか、あるいはすべきなのでしょうか。それはもちろん直接取引をしているMLVや翻訳会社です。では実際に意見し助言をしているかというと、こちらも必ずしもそうではありません。

まず仕事の打診をいただくと、予算や日程がどれだけ厳しくても、売る側としてはできるだけクライアントの意向に添うよう意識が働きます。この段階で品質についてはクライアントとMLV(少なくとも営業担当)の頭にはほぼありません。クライアントとしては、専門の業者に仕事を出すのだから品質については言及するまでもないと考えているかもしれません。

MLV社内で「この日程では品質を保証できない」「この条件で対応は無理」という意見が出ても、どうすれば対応できるかという話にしかなりません。それもクライアントに協力を要請するのではなく、社内あるいは翻訳会社や翻訳者など手配先の努力だけを求めるのです。しまいには「省ける作業はないの?」という言葉が何の考えもなく出てくる始末です。救いがありません。

安ければいいの?

ソースクライアントからたいしてお金をもらえないMLVは、その価格で対応してくれる翻訳会社や翻訳者を探します。クライアントに翻訳の品質について、またそのためにどれだけの手間がかかり、そのためにはどれだけの費用が必要なのか、そんなことを説明することはあまりないでしょう。(ごくごくたまにそんな話をすることもありますが。)

クライアントに何も言えないMLVは、依頼先である翻訳会社や翻訳者と交渉します。価格を下げることによるモチベーションの低下や品質への影響を考えることもなく。そう、相手の業績、収入、生活などは当然のごとく頭にありません。自分のことだといくらでも文句言うくせに。

結局、自分たちが払う金額をどうにかして抑えることしか頭にないのです。それにより他者が不利益を被ろうが、自分たちの利益をどうにか確保することしか考えられないのです。悲しいことです。情けないことです。

そんな理由で確認を省くの?

品質保証のプロセスや項目というのは、まず求められる品質や達成すべき品質というものがあって、それを基に検討し決められるべきもののはずです。ところが、「予算がない」「時間がない」という理由で「社内の工数を削ろう」と安易に考える人も少なからずいるのです。もちろん、削ることによる影響について考えることはありません。

これについていくら説明しても、「正論だよね」「本当はそうかもしれないけど」と言いながら、「でもこの仕事はこれだけしかもらえないから」などと言ってどこかしら品質保証のプロセスを削ろうとします。何を言っても無駄です。

そもそも、品質についてクライアントと合意を形成できていないでしょうし、そのための交渉も説明もしていないでしょうし、そのつもりも一切ないと感じられるのです。

MLVや翻訳会社の役割

ソースクライアントは翻訳の専門家でもなければ専門知識も持っていないと考えるべきです。それでも最終読者に訳文を提供するのはソースクライアントなのです。ソースクライアントは発注し、納品された結果を最終読者に届けるだけ(というと言いすぎかもしれませんが)と考えた方がよいかもしれません。

このようなことから考えても、MLVや翻訳会社が翻訳品質に関する責任の全てを負っていると言っても過言ではありません(たぶん)。そう、ソースクライアントと直接取引するMLVや翻訳会社の重要な役割として翻訳品質の確保は忘れてはいけないものなのです。そのために品質についてクライアントに説明することも必要でしょうし、競合他社に勝てないからといって妥当な理由もないのに価格競争に安易に巻き込まれるべきではないのです。

まとめ

ある国では政府が嘘しか言わず改ざんに手を染めて反省することもないこの時代、正論(この響き、何だか嫌ですが)を述べ正直に生きることは難しいかもしれません。しかし、それでもやはり、自分の仕事に対する責任は全うすべきなのです。今だけカネだけ自分だけと考えればそんなことはどうでもよいかもしれませんが、一度壊してしまったら、それを元に戻すことは困難極まりないのです。

MLVなり翻訳会社なり、責任も負えないようなら潰れてしまえばよいのです。その方が利害関係者にとって幸せなのです。少なくとも、不幸を広げることはなくなるのです。と、そんなことを考えなくても良いように、正しいことをできる会社が増えてくれるように祈っています。


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