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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

機械翻訳は理解して使うこと、過信しないこと

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機械翻訳は所詮機械翻訳。人間の翻訳に敵うことはありません。使うのは構いませんが、少なくとも現段階では売り物としての翻訳にはならないレベルであることを十分理解して使う必要があります。

Google翻訳などのオンラインサービスやみらい翻訳のような機械翻訳事業など、機械翻訳の勢いが止まらないようです。

機械翻訳を使って下訳し、ポストエディットを翻訳者に依頼する事例も増えているようです。(私はまだそのような案件を扱っていないので、どの程度増えているのか実感がありませんが。)

また、Webサイトに機械翻訳を導入するところも増えています。これはあまりにひどい誤訳が多いとしてニュースになったり、翻訳者の間のツイートでも時折紹介されるので、状況をご存知の方も多いかと思います。

機械翻訳は、利用目的によっては有用だと思います。例えば私的な目的での使用です。

私は、スイスの友人(Swiss German)がFacebookにドイツ語で投稿した場合、何を言っているのかな? と機械翻訳で見てみることがあります。結果はおおよそ内容を予測できるレベルのものから、まるで理解できない結果になることもあります。

機械翻訳の質がどうであれ、この程度の使い方であれば被害もなく、まあどうでもよい話で済みます。懸念するのは次のようなことです。

正確性が求められるところで、何の検証もなく、何の考えもなく、便利だからといって機械翻訳を導入してしまう組織や団体が出てくる(出てきている)こと。

「機械翻訳があるのだから翻訳費安くしてよ」とか「機械翻訳で下訳してポストエディットすれば楽だし早いし安くなるでしょ」とか勘違いする人が増えること。

Webサイトに機械翻訳を導入する例も多いが・・・

Webサイトに機械翻訳を導入する事例も増えています。「侍ジャパン・オフィシャルサイト」をというものがあります。とあるツイートで知りました。興味本位で覗いてみたら、まあ機械翻訳でしたね。ひと昔前の機械翻訳より精度は格段に上がっていると思いましたし、Google翻訳のようなサービスよりかなり良い出来栄えと感じましたが、やはり不自然なところが多々見受けられます。右上の「English」をクリックして英語に切り替えて、適当な記事を読んでみてください。

自治体のWebサイトに機械翻訳を導入した結果、ひどい誤訳ばかりで信頼を損なうとして問題になったこともありました。いくら機械翻訳の精度が上がってきているとはいえ、ものによっては、導入前に検証が必要です。誤訳があって伝わらない、読みにくくて読者に負担をかける、信用を落とす可能性もある、ということを理解してそれでも使うという覚悟が必要ではないでしょうか。

機械翻訳を信じるソースクライアント

多言語の翻訳結果をソースクライアントに納品し、その後の指摘(取り越し苦労)に困ったことがあります。

「ネットの翻訳サービスで見ると間違っているみたいだから確認して」と連絡がありました。Google翻訳で確認したら、原文の英語にある否定語「not」が各国語(数言語)の訳文にないとのこと。指摘を受けた各国語の訳文をGoogle翻訳に貼り付けてみると、確かに肯定文として、逆の意味で出てきます。

しかし、文を少しずつ分割していきます。すると、区単位か単語単位まで細分化されたところで「not」が出てきました。そう、所詮機械翻訳なのです。この時ソースクライアントと私たちが使ったGoogle翻訳は統計ベースであり、それまで蓄積されたものによって出力される結果が左右されます。そもそも、発売前の製品に関する文字列をGoogle翻訳に入力してよいのかどうかという問題もあります。

念のため翻訳者に確認すると、みなさん「not」の意味は入っていますよ、との返答。

こんなことがたびたび起こります。翻訳者のみなさんごめんなさい。

機械翻訳で「コストと期間の削減が可能になる」と勘違いする人たち

機械翻訳で前処理して、結果を人間が直せば楽なんじゃないの? と言う人たちがいます。

社内のとある人が言っていました。「機械翻訳してそれをプルーフしてもらった方が、左右や上下を間違えることはなくなるだろうし、いいんじゃないの?」

実はこれには背景があります。実際に翻訳する中で対義語を当ててしまう誤訳が複数回発生しました。いくつかは私たちのところで未然に防げましたが、ソースクライアントまで流出したものもありました。原因は翻訳支援ツールでのハイファジーをそのまま適用してしまったものがほとんどでした。そんなこんなで上記の発言に至ったわけです。

しかし、ここで翻訳者の作業と負荷を考えなければいけません。

通常、翻訳物の品質は第一翻訳者によってほぼ決定します。第一翻訳者のレベルが低く、プルーファーが熟練者であったとしても、訳文の状態が悪ければ、どこまで直せるか、翻訳会社指定の時間と金額でどこまで昇華できるか分かりません。だいたい、熟練者であれば、最初から訳した方が負荷も少なく、圧倒的に短時間で完了できるでしょう。

この第一翻訳者がヒトではなく機械だったとしたらどうでしょう。統計ベース、ルールベース、いずれの機械翻訳にしても誤訳のない、自然な訳文ができるという話を未だ聞いたことがありません。そんなものをプルーファーに直してもらうなど、ゼロから翻訳することに比べたら時間も労力もはるかにかかります。無駄にかかります。

理解して使うこと、よく知らないのに過信しないこと

技術の進歩に異を唱えるつもりはありません。進歩は素晴らしいものです。しかし、その技術をどのように使うかについてはよく考えなければいけません。また、良い話だけを聞いてそれを過信してはいけません。

機械翻訳がどういうものか、何ができるのか理解すること、そしてできる範囲や限界を知った上で、問題のない範囲で使うことが大切なのではないかと考えます。

それでだめなら、最初から翻訳者に依頼しましょう。


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