Com2 Blog

翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

なぜ多言語エージェントがつまらないか

cat-yawning

短かった夏休みも間もなく終わってしまいます。会社に行くのが憂鬱です。なぜ行きたくないのか、それは仕事に十分な面白さを見いだせないからかもしれません。それはどうしてなのか、考えてみました。一言でいえばつまらないのです。

エージェントで翻訳のコーディネーターをしています。その多くは多言語翻訳(ローカライズ)のコーディネーションです。対応するのは20、30、時に50言語ほどに及ぶこともあります。

日英、英日の仕事もありますが、圧倒的に多くの時間を多言語案件に費やします。

私の担当するクライアント企業では不況の中、人員のスリム化を図り、その弊害としてライティング力が全体的に低下していると感じられます。そんな中でもコスト削減のため内製化が進み、日本語と英語のライティング、あるいは日本語をライティングしたのち社内で英訳されることも頻繁にあります。

この段階で多くの問題が発生します。まず第一に分かりにくい日本語が作られます。次に英文科卒というライティング知識のない方が英語として通じるのか不安になるような英文を作ります。あるいは翻訳素人の日本人が日英翻訳を行うという、にわかには信じられないようなことが日常的に行われます。

このように問題だらけの英文が出来上がると、それを基に多言語翻訳するよう私たちエージェントに依頼が入ります。もちろん安く早くというQCDのCとDが厳しい状況であるのが当たり前となってしまっています。

事前にソースとなる英文全体を読む余裕はありません。ですが、当然のように翻訳の準備をしている段階でいくつか間違いや問題を発見することもしばしば。小さなものはこちらで対応してしまうこともありますが、致命的なものは報告し、念のため判断を仰ぎます。ただし、たまたま発見されたものだけです。

翻訳を開始してからも、翻訳者さんたちから質問や指摘をいただくこともあります。短納期で進めているプロジェクトですから、質問・指摘の一つ一つが重くのしかかってきます。しかし時に致命的な問題が発見されることもあり、見過ごすことはできません。

当初求められていた品質を担保するのが不可能になることもあります。どうすべきかいくつか案を提示するなどしつつ相談します。納期が延びることもまれにありますが、多くの場合は当初の日程で完了させることが求められます。

このような状況で、やる気を完全にそぐクライアントのご判断・お言葉がありました。「とりあえずできればいいから。」つまり、誤訳などなく、どうにか形になって入ればよいと。言われたのは一度だけではありません。

多言語翻訳というのは、マクロやスクリプトを用いて多くのデータを一括で処理するなど、データ処理上の面白さを感じる点もあると思っています。しかし、ワクワクするような効率化というものは毎回することではありません。

翻訳で一番重要と考えられる訳文の品質については、私たち日本の担当者が分かるはずもなく、この一番重要な点は各国語の翻訳者とプルーファーに依存します。私たちは何をするかと言うと、形式的な部分や、データの妥当性など、訳文の品質に直接関係のないところばかり見ています。翻訳に関して技術も実力も向上するはずもない仕事。

そんな中で「とりあえずできればいい」なんて言われてしまえば、やる気なんて出るわけありません。楽しいわけありません。

「だったらGoogle翻訳でも使えばいいじゃん」と正直なところ思ってしまいます。

もちろん、そのようなことばかりではありません。翻訳という仕事について真摯に説明差し上げると、ご理解いただけるご担当者様もいらっしゃいます。そのような方たちのおかげで続けられるのかもしれません。

しかし、夏休み最終日もこんな時間になってしまいました。憂鬱です。


コメント

“なぜ多言語エージェントがつまらないか” への2件のフィードバック

  1. とぅみぃ より:

    > 問題だらけの英文
    > 一番重要な点は各国語の翻訳者とプルーファーに依存

    あまりにヒドい場合、翻訳者やプルーフリーダーから「ココ分かりません」「意味不明です」などのコメントや申送りって送られてきませんか?

    もし送られてくるなら、それを材料としてどんなに変なことを書いているかをクライアントさんに説明する (認識してもらう) 機会があれば、多少なりとも意識改革に繋がるかなと思いますが…

    ある程度のレベルの文章 (和文や英文) が書ける人が、何かしらの形でクライアントさんの中にいて作業に携わっているのがベストでしょうけれど。

    • kyasu04 より:

      コメントありがとうございます。
      明らかな間違いや、理解困難な原文については、翻訳者やプルーフリーダーから質問やコメントが届きます。
      そのような内容、また翻訳手配前に気づいた点については、クライアントに質問したり、「ここは間違いやすいのでこうしたほうが訳しやすいし誤訳を防ぐことができる」など指摘・提案します。
      さらに、案件終了後に反省会をして問題点を聞かれたり、案件開始前の打ち合わせでどうすべきか提案してほしい旨相談いただくこともあります。そのようなクライアントは改善が見込まれ、実際少しずつですが改善されます。
      そうでないクライアントはやっかいです。コスト意識(聞こえよく言えば)は高いけれど、品質には無理解な方も当然ですがいらっしゃり、何をどう伝えても改善が見られない、そもそも真剣に聞いていただけないということもあると思います。恐らくどの翻訳会社でも、どのクライアントでも。そのようなクライアントでは概して日英ともにライティング技術が低いという印象を受けます。
      とはいえ、毎案件、地道に伝えるべきを伝え続けるしかないとも思っています。

コメントを残す