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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

翻訳をなめている人って、身内(MLV)にもいるんですよね

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翻訳を知らないで、なめている人って、ソースクライアントならまだしも、MLV(Multi Language Vendor)の中にもいるんです。翻訳コーディネーターの立場から、実際に見聞きしたこと、感じていることをからめてお話しします。

翻訳を理解している人ってどのくらいいる?

翻訳に関係する会社にいても、翻訳のことを理解していない人は驚くほど多いものです。

翻訳会社、MLVのような会社では、翻訳のほかにDTPなどにも対応しています。ある程度人数のいる会社であれば、翻訳、DTP、プロジェクトマネージャーなど分業している場合も多いです。私は翻訳の担当です。もちろん、社内にはほかに営業担当もいます。

この中で、翻訳というものを本当に理解しているのは、恐らく翻訳担当の中のほんの一部だけでしょう。翻訳を担当していても、翻訳に興味もなく、何となく仕事を回し、何となくDTPなどの後工程に渡す、あるいはクライアントに納品するという人もいると感じます。

翻訳を理解していない人は、翻訳をどのように考えているのでしょうか。原文を別の言語に置き換えるだけの簡単な作業と考えているかもしれません。

翻訳の単価と翻訳者の収入

翻訳を簡単だと考えていると、1ワード○○円というのがとにかく高く感じられるようです。でも、翻訳者が会社員としての自分たちの給料と同じ金額を稼ぐためには、どれだけ翻訳をする必要があるでしょうか。

分かりやすく、1ワード10円、1日に2,000ワード(8時間程度)、週5日間、日英翻訳をすると仮定して考えてみましょう。

10円×2,000ワード=20,000円(1日)
20,000円×5日=100,000円(1週間)
100,000円×4週間=400,000円(1か月)
400,000円×12か月=4,800,000円(1年)

これがすべて自分の使えるお金ではありません。会社員は年金、各種保険や税金が天引きされますが、フリーランスの翻訳者であれば、上記収入から自分で支払います。しかも会社負担もありません。全額自分で支払わなければなりません。

さらに、上記金額を稼ぐには、次の点を考慮しなければいけません。

  • 継続的に仕事がなければ収入減
  • 単価が下がれば収入減
  • 休暇をとれば収入減
  • 自分で営業活動しなければいけない
  • 対象分野、新たな分野について継続的な学習が必要
  • 営業活動や学習時間は収入にならない
  • 上記を解決するには単価を挙げる、あるいは単価の高い仕事が必要

いかがでしょうか。会社員より楽でしょうか。これでも高いと言えるでしょうか。

CATツールとパッチワーク翻訳

翻訳単価が下がった要因の一つとして、CATツールは外せないでしょう。新規翻訳は○○円、Fuzzyマッチはその○○%、100%は○○%(100%マッチについては、お金を払ってくれればまだいい方かもしれません)、完全流用箇所は保護されているので対象外。

この結果、翻訳者の収入は減りますが、さらに、翻訳しにくいという弊害も生まれます。いわゆるパッチワーク翻訳です。

完全流用箇所は保護されていて触れません。触れないけれど前後関係を知るためには読む必要があります。悪いことに、完全流用箇所が翻訳データ上見えなくなっている場合もあります。そんなときは翻訳メモリを調べます。翻訳者の作業量は翻訳ワード数だけでは推し量れないのです。

CATツールを使わない翻訳者、またCATツールを使わない案件も、これに引きずられて翻訳単価が下がってきているのではないでしょうか。

単価は下がり、翻訳もやりにくくなっているのです。でも、このような状況を理解していないとどうでしょう。ワード数だけを見て、完全流用箇所が多かったりすると、「こんなに少なくて楽だよね。すぐできるでしょ」となるわけです。

翻訳量以上に時間は必要

翻訳のスケジュールは通常翻訳量で決定します。1日2,000ワード程度というような基準から日数が決まるのです。ところが、先述の通り、パッチワーク翻訳では実際の翻訳対象以外も確認しなければ、完全流用である周りとスタイルの統一感がなくなります。翻訳対象外も確認するとなると、当然作業量も作業時間も増加します。

とはいえども、現実は、翻訳量に対してギリギリの時間しかもらえないことが多いです。「製品の日程が決まっているので」「後の工程に影響するので」と、当初から十分な日程が確保されていないことも多いですが、単に「急ぎなので」と言われることもあります。

そうなると翻訳コーディネーターの準備や前処理、翻訳者の作業期間、コーディネーターの後処理、どれも余裕などありません。かといって、十分な準備をせず始めると、後でやり直しが必要になるなど無駄が発生することもあります。

社内であった話

同僚から聞いた、少量の翻訳での話です。英語から30言語展開してDTPまで込みの案件でした。

プロジェクトマネージャーからミニマム翻訳の依頼を受けた同僚の翻訳コーディネーターが、日数の試算を伝えました。翻訳に1日、前後それぞれ1日(準備・手配と翻訳後処理・確認)、合わせて3日。するとプロジェクトマネージャーはこう言ったそうです。「たったこれだけなのに、なんでそんなにかかるんですか?」

えっ、という驚き。ミニマムでも30言語ですよ。これは妥当な日数、というか、かなり無理した日数ではないでしょうか。

ちなみに、そのプロジェクトマネージャーはDTPと校正などの日数に2週間確保しようとしていたと聞きました。逆に聞きたい、「たったこれだけなのに、なんでそんなに必要なの?」

今度同じことがあったら、「自分でやれば」と言ってやります。

まとめ

翻訳についての理解がないために、単価は下がり、時間もなく、結果として品質は下がります。翻訳者は育たず、力のある翻訳者は単価の高い仕事に流れ、安い単価の仕事には品質の低い翻訳者しか残りません。翻訳者というリソースを確保したければ、翻訳者の育つ環境がなければならないと感じます。

そんなことを考えながらも、状況を変えられない自分が歯がゆく思いつつ、明日も翻訳コーディネーションの仕事に向かいます。


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