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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

エージェントに転職したいきさつと感想など

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エージェントに勤めて10年以上。人生の転機が訪れようとしている今、ちょっと振り返ってみようと思います。

現職に就く前は、派遣社員として某メーカーの一部署で部内の翻訳と通訳をしていました。とはいえ専門的な教育や訓練を受けたことはなく、単に英語ができるからということで採用いただいたという、よくある話、できない人間でした。救いだったのは、自分が訳したものは部内でも一部の人の目に触れるだけということ。当時の訳文が目の前にあったら、迷わず燃やし尽くします。

現在のエージェントに転職したきっかけは3つ。

その1:正社員という立場がほしかった

派遣社員という立場でも、当時独り暮らしの生活に不自由することない程度には収入がありました。しかしいつ契約が打ち切られてもおかしくない立場であり、不安は常に付きまとっていました。

その2:某メーカーの同僚派遣社員が辞めた煽りをうけた

その同僚は技術系の仕事をしていました。彼が辞めたことで、その穴埋めを私がすることになりました。私は文系ということもあり、もともと技術的な知識はありませんでした。実際に行った業務は、クレームがあると機械を分解し、問題個所を特定するなど慣れないものでした。今考えればよい経験となりましたが、当時は翻訳と関係ない仕事をしていることに疑問を感じたものです。

その3:このままでは翻訳者になれないと思った

翻訳者になるためにはどうしたらよいか、翻訳の実力をつけるにはどうすればよいか、そんなことを考えていました。当時は翻訳の通信講座を受けるなど、自分に大金を投資する勇気がありませんでした。そんな中、前述の状況にて翻訳に関わる仕事の割合が急激に減り、状況を変えなければならないと思うようになったのです。

そんな中「Trados」を使うという仕事の募集がありました。今考えると、その時の判断が望ましいものだったのかどうかは分かりません。メーカーで翻訳の仕事をどうにか続け、通信講座を受けながら職場で技術的な指導を受けて、技術翻訳の実力を向上させるという選択肢もあったかもしれません。

転職してみた感想

「Trados」という言葉につられて転職したようなものです。面接のとき何を話したかというと、やはり英語について。結局、「英語が使える人」ということだけで採用になったような・・・。で、結局転職してどうだったかというと、もちろん良いことも悪いこともあります。

「Tradosがよほど好きなんだね」と勘違いされるくらいよく使う

業務の大半は多言語の対応です。日英や英日はあるのですが、割合は少ないですね。

扱う言語数が増えれば、翻訳費用、日数、また指定用語の管理などについても効果が大きくなります。とにかくTradosです。当時はTrados 6.5。入稿すれば解析して、バッチ翻訳して、MultiTerm作って、また翻訳が納品されればGeneric Tag Verifierかけて、そしてQA Checkerなるものが出現してからはそれもかけて。そんな毎日でした。

毎日使い続けていれば数々の問題やエラーにも遭遇しますからそれなりに詳しくなります。対処方法も徐々にマニアックになっていきます。たとえば、TTXをテキストエディタで開いて、○○○○を△△△△に置換するなど操作したり、邪魔になっている色情報やフォント情報を削除したり。

周りから見れば、Tradosのことはこの人に聞けば大体分かるよね、とか見られるようになり、しまいにTrados好きと思われてしまっているかもしれません。決して好きなわけではないのですが。

知らない言語を見る楽しさと虚しさ

多言語と言っても、10年前はまだまだ言語数は少なかったですね。せいぜい10言語程度だったでしょうか。それがみるみる増えて、20言語、30言語、40言語・・・処理するだけでも大変です。

何年も見ていると、各言語の特徴がなんとなく分かってくるのです。この言語は母音が続く単語が多いとか、このアクセント文字は何語だとか、似ている文字でもこの言語にこの文字はないから文字化けだなとか。たいてい文字の特徴だけですが。

とはいえ、何年見ていても読めないものは読めません。翻訳の内容は各言語ネイティブのプルーファーが確認しています。私のように読めない人間が読めない言語に対してできるチェック項目はたかが知れています。機械的にできるもの、翻訳の指示が守られているかどうか、あるいは翻訳の漏れがないか上から下まで眺めることです。

扱っているのは取説などのマニュアル類が多いのですが、そんな翻訳でも一番大切なのは、対象読者に情報を正確に、できるだけ読みやすい訳文で伝えることのはずです。しかし、その一番重要な訳文の質は見ることができません。翻訳に携わる身として歯がゆい限りです。ローカライズ・エンジニアとしての立場を自分の中で納得できていればよいのでしょうけれど。

また、処理に悩まされる言語というのもあります。右から左に流れる双方向言語、つまりアラビア語、ペルシャ語、ヘブライ語といった言語です。でも、よくよく見ると、文字が美しいんですね。悩ましいけれど美しい。おかしな感覚です。

結局翻訳の実力については・・・

多言語を見ていても翻訳の実力に変化があるはずありません。英日・日英しかできない私が、仮にほかの言語を習得できれば英語を読んだ時の理解の幅が広がる可能性はあります。しかし眺めているだけでは何の変化も起こりません。

割合は少ないにしても英日・日英の案件もあります。ただし、お金と時間の問題が立ちはだかります。クライアントがそれほど高い品質を求めていないのに、細かく確認したり、勝手に時間をかけて校閲することは許されません。企業ですから。歯がゆい思いをします。

結局、翻訳の実力は向上しません。もし翻訳者を目指す方がこのブログを目にし、転職を考えており、エージェントへの応募を考えているのであれば、多言語を売りにしている会社はお勧めしません。

ただし、言語のマニアの方であれば楽しいかもしれません。本当に毎日いろいろな言語を見ますから。いや、本当に言語って美しいですよ。


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