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【翻訳を扱う会社から】翻訳会社でやってはいけないことから思うこと

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翻訳会社はクライアントと翻訳者の間にあり、なかなか難しい立場でもあります。要求に応えるのが困難なこともあります。で、どうにかこうにか対応しようとして、やってはいけないことをしてしまう場合もあるようです。

あるツイートでこんな記事が紹介されていたので読んでみました。

本当にあった怖い翻訳会社」(Alcom World)

ロシア語の訳語修正を翻訳者に確認せず翻訳会社の社内でしてしまったという話です。翻訳者の方にとっては信じられないことかもしれません。しかし、翻訳会社やソースクライアントの様子をうかがっていると、あながち特別な例ではないのかもしれないと思えるのです。実際、クライアントから同様の話を聞いたことがあるという人も身近にいます。

日英・英日翻訳と多言語翻訳の違い

日英や英日翻訳の場合、クライアントも読める言語であるためか、どの翻訳会社でもそれなりのチェックをして納品すると思います。それなりというのは、誤訳がなく、指定用語が使われており、かつターゲット言語として読みやすいなどです。(もちろん、それだけではありません。)しかし、多言語翻訳(ローカライズ)となると必ずしも状況は同じではありません。

何が違うかというと、ほとんどのターゲット言語については、クライアントも読めなければ、翻訳会社の担当者も読めないのです。読めない以上、翻訳会社でターゲット言語としての読みやすさなどチェックできるはずもありません。誤訳についても、何らかの偶然でもなければ発見することはできないでしょう。誤訳の有無や訳文としての読みやすさといった本来の訳文品質は、翻訳者とネイティブのプルーファーの力量に係っています。

多言語翻訳では何を見ている?

では、翻訳会社の社内では何をしているのでしょうか。ターゲット言語を読めない以上、目につくのは原文との違いです。つまり、タグが適切か、訳抜けはないか、数字は間違っていないか、訳文の不一致はないか、句点などの体裁は原文と同等か、指定訳語は間違いなく使われているか、などです。

中には間違ってはいけない重要なポイントもありますが、Readabilityに影響しないような点もあります。例えば句点や大文字小文字の違いなどです。言語によって表記ルールが異なるのは当たり前なのですが、日本語と英語しか知らないため、すべて同じルールに当てはめたくなるようなのです。そんなところに時間を割くのは無駄なのですが、そのような点を指摘するクライアントがいるのも事実です。

本来翻訳会社で勝手にやってはいけないこと

さて、前置きが長くなりましたが、本題に入ります。

今日お話ししたいのは訳語の変更についてです。例えば、「英文原文の一単語変更しただけだから、全言語そこだけ直して」という依頼を受けた方もいらっしゃるのではないでしょうか。翻訳が終わりそうなタイミングで「用語集が更新されたから、変更箇所を反映して」と用語集を渡された経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

単語の活用や語尾変化が必要な言語は数多く存在します。名詞には男性、女性、中性があり、冠詞は性や数によって変化し、動詞も格によって変化するといったようなものです。それにもかかわらず、「用語を差し替えるだけだから単純な修正だし、すぐできる」と安易に考えてしまう人がソースクライアントにも翻訳会社にも多いと思うのです。

言語について安易に考えているソースクライアントから、これまた安易に考えている翻訳会社の担当者が用語差し替えのような指示を受けると、前述したロシア語の修正のような事が起こります。先の投稿者は、翻訳で正しい結果を求めている発注者であることが分かります。しかし、発注者の中には翻訳品質というものを理解していない人があまりに多いのです。

機械翻訳を良しとする人たちが増えているようですが、そこまで極端な考えではなくとも、ソースクライアントの考える「安い方がよい」「早い方がよい」の度合いが大きくなっているように感じます。そのようなクライアントは、言語について安易に考え、日本人である自分の目にきれいに映るものが良い品質であると考えているようです。

翻訳会社は訳語の単純な置き換えでは問題がある旨、クライアントを教育すべきなのですが、教育しようとしても「お金を取る言い訳でしょ」とか「そんな細かいことはいいよ。安くやってよ」と一蹴されることがあるかもしれません。また、教育などしようとせず、ただクライアントの言うがままという翻訳会社もあるかもしれません。

本来あるべき翻訳の品質が求められず、言葉の分からない日本人担当者が見て問題なく見える、あるいはきれいに見えるものがよしとされることが多い中で、翻訳会社が翻訳者に確認せず、勝手な判断で訳語の差し替えをしてしまう状況が発生するのは必然的なものかもしれません。

まとめ

本来翻訳会社で勝手にやってはいけない修正はあるのですが、そうせざるを得ない場合も多くなっているのかもしれません。とはいえ、訳文の修正作業を、実際の苦労を知らずソースクライアントが安易に考えている場合には、翻訳会社は必要な説明をすべきです。もし聞く耳をもってもらえなかったとしても、説明する努力は続けるべきだと考えます。

常にソースクライアントへの教育を心がけ、翻訳は単なる言葉の置き換えではないし、簡単にできることではないということを、できるだけ伝えて、理解してもらえる努力を続けるべきです。でなければ、翻訳会社の存在意義はないでしょうし、翻訳者も絶滅危惧種になってしまいます。そうなってからでは遅いんです。

今回とあるツイートから得た情報ですが、私のチームにはその内容を紹介し、たった1単語だけのことだと思っても、自分の熟知していない言語に勝手な判断で勝手に手を加えることは誤訳にもなり得るということを伝えました。TwitterなどのSNSは、本当に素晴らしい情報源になり得ますね。感謝感謝。


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