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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

早く安く

from-mlv

世の中は早い安いで溢れています。わたし自身そういうものを選んでしまいがちなのですが、どこかにそのしわ寄せが行っているのです。妥当な時間と適正な価格で世の中が回るべきなのですが。

MLVのなかにいると聞きたくないクライアントの声が聞こえることがあります。「ほんのこれだけなんだけど急ぎで…」「たったこれだけなのになんでそんなに高いの?」など。そんなときは呪いたくなる気持ちを抑えて仕事をします。

ソースクライアントの問題

早く

まず、仕事というのは依頼してすぐに取り掛かってもらえるものではありません。それに自分の都合だけで「早く」というのはそもそもおかしいのです。どの会社でも誰でもいろいろな仕事を抱えているのです。その中で調整しているのです。頼んだからすぐ開始、とはいかないんです。自分の立場で考えたら容易にわかりそうなものです。

ときどきとんでもないボリュームの翻訳を数日であげてほしいと依頼があります。普通なら1か月や2か月かかるようなボリュームです。あまりに無理な要求で「早くしてと命令されたら、あなたは東京~大阪間を1時間で往復できるのですか?」と聞きたくなることもあります。

安く

ほんの1文や2文、ミニマムチャージ。「高い」と言われます。子どもにお遣いをさせる感覚で依頼しているのかもしれません。ほんの1文にどれだけのことがかかわるのか考えもしないのでしょう。メール対応、調査、コンテクストを考え翻訳、納品など、それなりに時間がかかります。結果として見える訳文だけではありません。

それでも「高い」「安くしろ」という人もいるでしょう。そんな人はこう言われたらどう思うでしょうか。

「あなたの仕事なんて簡単にできるよね。給料泥棒だね。平成29年度地域別最低賃金の全国加重平均額は848円だから、時給848円で給与計算しようか。でも簡単な仕事なんだからすぐ終わるでしょ。1日8時間居座ってないでとっとと終わらして帰ってよ。その分は給料発生しないよ」

わからないのなら

ソースクライアントは翻訳の専門家ではありません。翻訳のことは何も知らないと考えた方がよいと言われます。その通りです。しかし、何もわからないのであれば、専門家(?)であるはずのベンダーに期間と金額の理由を聞けばよいのです。なんとなく高いと感じたから安くするよう求めるというのはいかがなものでしょう。

翻訳会社、またはMLVの問題

「お客様がこう言っているからその要求を満たさなければいけない。そのためにこの納期でとにかく安く仕上げなければいけない。」ベンダーの中に本気でこのように考えている人がいます。最善を検討するのは必要なことですが、求められれば盲目的に従おう、応えよう、というのは正しい考え方とは思えません。

求められれば裏付けもなく値引きをする、短期間で納品する、無理な要求でも従う、そんなことをしていたら次はもっと厳しい要求を突き付けられます。自ら首を絞めることになります。短納期で受けるにしても金額を下げるにしても、説明できなければいけません。正当性を証明できなければなりません。

何の考えもなく早く安くしてたら、そのうちみんなつぶれるよ

早さと安さだけを求め、品質を二の次にしていては誰も幸せになれません。クライアントも翻訳会社も翻訳者も、さらにはエンドユーザーもです。

クライアントがどうしようもなく低品質なものを作って市場に投入していれば、たとえ販売価格が安かったとしても、他のメーカーや海外のメーカーに勝つことができません。売れません。つぶれます。

ベンダーがクライアントの要求を黙って聞くことしかしなければ、翻訳価格はどんどん下降し、納期もどんどん短縮され、実力のある翻訳者には受けてもらえなくなり、品質も維持できなくなり、機械翻訳でも変わらないと思われるようになり、利益を上げることができなくなってつぶれます。

競合他社が不思議なほど価格を下げる様子をここ何年か見てきました。さらに機械翻訳を無責任に勧める会社も出てきています。無責任というのは、クライアントに対してメリットだけしか伝えていないためです。機械翻訳がいけないとは言いません(わたしは好きではありませんが)。しかし、案件による向き不向きもあれば、リスクもあるはずです。ただ「早くなります、安くなります」では詐欺のように思えてなりません。

いずれにしても、ソースクライアントとベンダーが、自分たちの仕事に対して、翻訳者に対して、エンドユーザーに対して無責任じゃないかと思えることが非常に多いのです。このような状況が続けば、翻訳業界の先行きは暗いものとなります。自分たちのためにも、取引先や最終読者のためにも、短期的な売り上げではなく、長期的な視点でものごとを見てほしいと願っています。


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