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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

翻訳フォーラムシンポジウム2019と大オフ

去る5月26日日曜日、翻訳フォーラム「シンポジウム2019~足さない・引かない」と大オフに参加してきました。すでに日にちも経ち、今さら感もありますが、自分用メモとして。

昨年はぎっくり腰で、せっかく参加したにもかかわらず、十分に話を聞くこともメモを取ることもできませんでした(それでも大オフではお酒を飲んでいましたけど)。今年は腰の調子も良く、しっかり話を聞くことができました。ただし、聞いて楽しむことを重視したため、メモの量は少なく、ここに書く情報も物足りないかもしれませんし、ズレが生じているかもしれません。あくまで自分用のメモです。自分で書くことに意味があるはず。詳細な報告については、屋根裏通信のSayoさんがアップしていらっしゃる記事が参考になると思います。

今回の内容は次のとおりです。
「翻訳と絵」
「循環とフィードバックでピント合わせ」
「辞書最新情報2019年版」
「やってみた!辞書の棚卸し」
「接続表現をどう処理するか」
「『原文の絵を描く』とは」
「翻訳者のための言語学のススメ」
「足さない・引かないのケーススタディ」
「Q&A」

以降、簡潔にまとめるために報告箇所では常体を使用します。

「翻訳と絵」(深井・高橋あ・井口・高橋さ)

doorjambが「側柱」と訳されていて、英日の辞書にも過去の翻訳にも使われている。
では、実際にはどのようなものかdoorjambと側柱で調べてみる。すると、それぞれ表すものが違う、絵が違う。辞書の訳語ではなく、同じ絵を描ける言葉として考えるなら「ドアの枠」などだろうか。

本来必要なカンマ一つあるかないかで意味が変わってしまう。ただし、そのまま訳すと現実にそぐわないものになる。これは個人の経験から誤りであると気づき、正しい形に修正することができる。また、辞書も細かい点まで目を通せば気付けることがある。さらに、参照が示されている場合は目を通さない手はない。

millionsをどう訳すか。もちろん文脈によるが、それでも難しい問題である。そもそも英語と日本語で概念が異なる。イメージする範囲が異なる。millionの日本語「百万」を考える。「数百万」と言った場合、人によってイメージする数字に幅はあるが、少なくとも1千万よりは下となる。ところが英語のmillionsは次の単位を示すbillionsの手前までを含む。これほど大きな違いがある。
逆に「数千万」を英訳すると考えてみる。「Tens of millions」とも書けるが、英語ネイティブのイメージと合致するだろうか。もしかしたら単に「millions」とした方が同じ絵を描けるのではないだろうか。
やはり難しい問題ですね。

Flowchartを例示。書き手がどういう枠組みでとらえているか考えること、またイメージを掴むために絵の中を動き回る(行ったり来たりを繰り返すこと)が大切である。
「翻訳は足を使え」
著作権について著作者人格権、同一性保護権というものがある。これは著作者の了解なしに作品に変更を加えてはいけないということ。「足さない・引かない」はこれに関わり、著作物の同一性を保護することに当たる。

「循環とフィードバックでピント合わせ」(井口)

翻訳をするとズレが生じる。あちこちズレる。これを、全体を通して読んだ時に感じるズレを小さくする。部分部分の最適が全体の最適とは限らない。
翻訳は循環が必要。円を描き、4分割した位置に「単語」「文」「章・セクション」「文書全体」があると考える。「単語」を理解するには「文」を理解する必要がある。「文」を理解するには「章」を理解する必要がある。と言った具合に、ぐるぐると循環し続ける。
とはいえ、先に進まなければならない。とりあえず訳語・訳文を仮置きして検討することもある。
このように循環させるには一人の翻訳者が責任を持って考える必要がある。
ここまでして考えた翻訳も、正しいか否かは翻訳後、読者の下に届いてから決まる。

「辞書最新情報2019年版」(高橋あ)

辞書最新情報を10位から1位までの形式で紹介されました。一番記憶に残っているのは音響と帽子屋さんの楽しそうなお姿であることはここだけの話。
もちろん、参加したからこそ得られる貴重な情報もありました。

「やってみた!辞書の棚卸し」(タコの会)

発表されたタコの会の皆さんが、辞書を十分活用できていないなどの悩みから、所有している辞書の詳細な情報や特徴を整理する棚卸しを実施された実例が紹介されました。「とりあえず串刺しておけばいい」など、わたし自身にも当てはまるものでした。手持ちの辞書それぞれの特徴を把握して見直し、必要な辞書環境を整え最適な設定で調べられるようにする辞書の棚卸しは、今のわたしにも必要であり、有効な手段であると感じました。

「接続表現をどう処理するか」(高橋さ)

「『すなわち』、『つまり』は、英訳では削れ、和訳では挿入しろ」とアドバイスされたことについて考えてみることにした、というのがセッションのきっかけ。
母語では書き分けているが、翻訳になるとパターン化して単調になりがち。
・・・とこのセッションは難しく、うまくまとめることができません。シンポジウムの資料を復習すること、また日本語の文法を掘り下げることが必要だと感じています。

「『原文の絵を描く』とは」(星野)

「The rain in Spain stays mainly in the plain.」
これは映画や舞台「マイ・フェア・レディ」で訛りを矯正するという背景で使われたセリフ。これに対して3つの訳文を例示。
(1) スペインの雨はおもに平野に降る
(2) 日は東、日向にひなげし、光あふれひばりひらり
(3) ヒマラヤの鄙(ひな)に終日(ひねもす)ひらひらと雪はひた降る
1番は同じ絵が思い浮かぶ。2番と3番は同じ絵を描けないかもしれないが、原文が韻を踏んでいること、またそのセリフの背景を踏まえると、原文と訳文の読み手や聞き手が同じ印象を持てるものとなっている。
この1文から、翻訳には字面だけでできるものではない難しさがあり、だからこそ深く読み、理解し、訳語を検討する楽しみがあるのだと、改めて感じられました。

「翻訳者のための言語学のススメ」(佐復)

原文にtooやalsoがないのに訳文に「も」があると翻訳会社からコメントをもらうというようなことがある。これを日本語の「非出現」と「結束性」で説明できるのではないかと考えた。発表者は現在放送大学で言語学を学んでいるという。
学生時代、言語学概論の授業をとっていましたが、正直なところ何を学んだのか学ばなかったのかも記憶に残っていません。実家に教科書が残っているかもしれませんが、昔の言語学と今の言語学では対象範囲に違いがあるとのこと。学び直すのも良いかもしれないと感じました。

「足さない・引かないのケーススタディ」(高橋さ、井口、高橋あ、深井)

英語原文に比喩で「ウサギとカメ」が出てきたら、一般化してしまうか、原文のままか、説明的な情報を付けるか。ウサギとカメなら誰でも知っていると考えられることと、原文作者の意図を考慮すると、原文まま訳出するのがよいのではないか。ただし、自分が知っていることをすべて周りも知っているとは限らない。都度配慮が必要。

原文に「for want of a nail…」とあった場合、そのまま「釘がないので…」でよいか。マザーグースの歌だが、日本人にどれだけ馴染みがあるか。あまりに馴染みがないのであれば、訳文ではその意図がわかるよう、原文で省略されている部分も出した方がよいかもしれない。原文読者は省略形でも十分な情報を受け取ることができる。訳文読者が受け取る情報も同じにする。

訳文読者が知らないと考えられるからと言って、みやみに追加してはいけない。映画の紹介などではネタバレになってしまう。また、原文に書かれていない情報を書き足してしまうことは同一性の保護に反する。調べたことは書きたくなってしまう心情もあるが、読者のために書き足すことは認められることはあっても、自分のために書き足すのはダメ。

原文とおりに翻訳しているようでも、状況に応じて使えるわけではない。「~ is ~」をなんでも「~は、~」のようにしては使えない場合もある。「~とは、~のことをいう」を使うべき場合だってある。文脈を考える。

「one more or」を「1つ以上の」とすることは多いが、削った方が日本語として自然になるのではないか。実務ではこれを入れるように求められることはあるが、厳格な(?)決まりのない案件ではなくしていくことも必要かもしれない。

文化の違いもある。日本語では冗長な挨拶が好まれるが、英語などでは要件を簡潔に述べる。案内、通知、メールなどが顕著な例。文化の違いにより原文を書き換える、リライトする必要がある場合は申し送るとよい。また、翻訳というよりリライトになることを事前に伝えるとよい。

肯定の疑問文を否定の疑問文や二重否定の疑問文にすることがある。二重否定で微妙なニュアンスを出すことができる。原文の意図するところ、原文を読んで描く絵を考えて同じ絵を描けるようにすること。

まとめ

かなり浅いメモとなっています。現場で実際に伺ったお話は非常に中身の濃いものでした。このような適当とも思えるまとめ方になってしまったこと、登壇された皆さんに申し訳ないくらいです。

大オフも例年通りの盛り上がりでした。日中は翻訳に関わるあれこれを学び、夜には翻訳について同業者と思うままにお話しできる機会はそうそうありません。

登壇された皆さん、関係者の皆さん、貴重な機会をありがとうございました。


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