Com2 Blog

翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

第27回JTF翻訳祭に行ってきました

27th-jft-festival

11月29日水曜日、第27回JTF翻訳祭に行ってきました。昨年に続き今年も参加したいセッションが目白押し。どれにしようかと会場に着くまで、いや着いてからも迷っていたくらいです。

まず言えるのは今年も行ってよかったということです。
どのセッションにするか迷いに迷いましたが、参加したものはどれも素晴らしく、諦めたものも参加したらきっと「よかった」と思えたでしょう。

まずわたしが参加したセッションですが、次のとおりです。

セッション1 「翻訳教育のススメ―ひとは如何にして翻訳者になるか―」 柴田 耕太郎氏
セッション2 「ミニ講演会 第2部」
セッション3 「書籍を訳すという仕事」 村井 理子氏/伊皿子 りり子氏
セッション4 「出版翻訳入門 ~産業翻訳からのアプローチ~」井口 耕二氏/松丸 さとみ氏

そして交流パーティー

昨年同様、多くの方がブログで詳細なレポートをアップされています。いまさら事細かに書くつもりはありません。(あれだけの情報量を上手にまとめる自信がないと言った方が適切かもしれません。)

その代り(代わりってなんじゃ)、各セッションで聴講したことと二足の草鞋であるエージェントと個人翻訳業で日頃感じていること、それぞれ絡めた記事を別途、追い追い書いていきたいと考えています。

セッション1 「翻訳教育のススメ―ひとは如何にして翻訳者になるか―」

有名な方なのでお名前は存じていましたが、お話を伺う機会は初めてでした。話の内容もおもしろく、話し方にも惹きつけられるものですね。メモしたことをすべて書きたくなってしまうところですが、印象深いお話とお言葉をいくつか紹介します。

子役オーディションで題材のセリフをみんな同じ調子で読んでいることに気が付き工夫された。翻訳も同じで、見ていると訳す力点が同じことが多い。ちょっと違った力点の作品を取りたくなる。そういったときには審査員の立場で考えてみるのも良い。

柴田さんが師と仰ぐ方の言葉「翻訳は短ければ短いほどいい」。
(これは日々感じている。内容を理解せず字面で言葉を置き換えるのは論外だが、意味を理解できたとしてもだらだらと長ったらしく説明的になってはまずい。無駄なく的確に訳すことが難しいと感じるときもある。)

継続は力なり。続けたから今がある。

専門用語の重要性を強く感じた。多義的な単語は調べて語義を狭める。翻訳者のとても大変な仕事。

良いものより悪くないもの。対価にあったものを考えることも必要。場合によっては力を流して80点台のもので出すことも大切。

読点は多用しない。読点は意味を持つ。

翻訳は音である。頭の中で声に出して読んでいる。

不用意に接続詞・接続助詞を使わない。論理の流れを作るもの。想定読者を決める。

どちらでもとれるなら、おもしろい方をとる。

自信を持つべき。嘘はいけないが薄化粧はするとよい。(履歴書など)

声を出して読む。つっかえるのは誤訳。イントネーションがおかしいのは悪訳。

大切なのは「正しく読む」こと。

セッション2 「ミニ講演会 第2部」

今年初の試みであるミニ講演会。どの講演者のお話も興味深く、参考になるものでした。ときに会場内が笑いに包まれるなど、雰囲気も多少緩めでおもしろい試みだったと思います。講演者は10分という制約があり、時間が来ると無慈悲に切られてしまうため、今までとは違う緊張感もあったかもしれません。

このセッションの中で気になったもの、気になった言葉をメモしておきます。やはりエージェントとして、また個人翻訳者として働く身として感じるところはこういうところというものです。

(株)ビーコス 金 春九さん

東京に住む韓国人は韓国語が少しズレる。
→現地(各国)で翻訳者を抱える構造を作りたい。

カセツウ代表 酒井 秀介さん

「選ばれる通訳者・翻訳者たったひとつの絶対条件」についてのお話でした。
「思い浮かべてもらうこと」がその答えです。なるほど、と思った次第です。

(株)テクノ・プロ・ジャパン 梅田 智弘さん、加藤 泰さん

フリーランス歴の浅いわたしには非常に興味深くためになる内容でした。
内容は当たり前のようで、これができていないから合格しないんだというものばかり。現状の合格率が決して高くないわたしは改めてこの内容を見直さなければいけないなと強く感じました。

社内翻訳者 上野 哲也さん

ドイツ語ネタ、つい笑ってしまいました。

(有)風工舎 川月 現大さん

あいまいな文のもたらす不経済効果についてのお話でした。
これについても強く共感して聞いていました。先日もエージェントにて多言語翻訳の原文となる英語があいまいで、その不経済効果について同僚に説いたところです。

齊藤 貴昭さん

最後はテリーさん「超高速版!翻訳チェックの組立て方」、本当に超高速でした。
内容については、わたしはエージェントにも勤めており、その前はメーカーの品保に所属していたこともあるためわかりやすく納得のいくものばかりでした。
品質保証は翻訳チェックだけではないとエージェントで最近強く感じていることでした。これについては別の記事で何か書くかもしれません。

もちろん、ここに書かなかった皆さんのお話もためになるものばかりでした。
とはいえ、あまりにざっくり過ぎて皆さんすみません。

セッション3 「書籍を訳すという仕事」

出版翻訳のお話。集中力が15分しか持たないと仰る村井さんと編集者伊皿子さんのお話でした。出版翻訳者ならずとも勉強になることや参考になることはたくさんありました。特に取り組むべきと感じたことはSNSとブログに関するものです。

村井さんはツイートするにも足したり消したりかなり手を入れている、これはいけるという140文字を作る、文章の練習として使うことができる。
(自分がいかに向上心もなく適当にツイートしてきたか、上手く書こうという欲はあっても十分練ることはしていなかったと反省。)

ほしいと思うもの、必要なものには惜しみなくお金を使う、お金で買える実力、パソコンなどのツールにもかなり使っている。
(食事の支度なども利用できるものはうまく利用すべきとのことに感動すら覚えました。仕事や家族や生活のバランスをとることって疎かにしがちかもしれませんが、大事なことですね。)

仲間を作っておくとよい、孤独と向き合いすぎない、人との交流を大事にする。

出版翻訳の魅力を一言でまとめると「毎日がギャンブル」。

儲かるももうからないも(わりと)あなた次第。

フィッシュ&チップスの店を持つことが夢。翻訳がだめならフィッシュ&チップスの店がある、くらい肩の力を抜いたほうがよいかも。

心配するなら5分前。

ブログは400字で切る、800字で切るなど練習材料になる。2000文字と決めたら3500文字くらい書いてから削っている。4パラグラフで1つの記事にするなど決めて練習してもよい。
(ブログも十分練ることなくアップしていたなと反省。気付かせていただいたのですから、これから少しずつでも改善できればいいなと思っております。)

セッション4 「出版翻訳入門 ~産業翻訳からのアプローチ~」

このセッションも出版翻訳に関わるお話です。徹子の部屋のような趣きのあるセッションでした。井口さんが産業翻訳から出版翻訳にシフトした流れ、出版翻訳の事実などが語られました。

お金の面で現実的なお話があり、暗い部分も見えましたが、かえってよかったのではないかと思います。現実を知った上で取り組んだ方がよく、物事はできれば最悪を想定していた方がよいと常々考えています。

また、お金にはなかなかならないという現実がありながらも、産業か出版のどちらか一方を選ぶ必要はなく、二足の草鞋というやり方もあるとのことを伺うことができ、ほっとした方も多かったのではないでしょうか。なるほど。好きなことで生きていくのが厳しくても、あきらめることはないですよね。好きなことを諦めるのもまたストレスとなります。

Transcreationについても話に上がりました。井口さんは常々「それって普通の翻訳でしょ」という立場でいらっしゃいます。字面だけ訳しても、ネイティブが読んで理解するような、暗に示されたものが訳文に入っていないとダメで、そこまでカバーするのは普通の翻訳であるということです。納得です。

産業翻訳の依頼の中にも、「できるだけ原文まま」「直訳」(どのような意図で直訳と仰っているのかクライアントや担当者によりますが)と指示されることもあれば、「読みやすい自然な訳文」と指示されることもあります。後者は当たり前のことだと思いますが。

要するに異なる文化ではぐくまれてきた異なる言語を全く同じように訳すことはできるはずがなく、読んで、自分の頭で理解して、それを訳文言語で出力するしかないのです。そういうものを習得する、あるいはそういう技術を身に付け向上できるよう日々励んでいるのです。

この他にもためになるお話はたくさんありました。いかんせん徹子さん、もといさとみさんによる井口さんのお話の引き出し方が上手で、そちらにも気を取られてしまいました。

まとめ

翻訳祭に参加したのは3回目でした。
初めて参加した2015年は翻訳会社向けの内容が多かったと記憶しています。

昨年はがらっと変わり、翻訳者のための翻訳祭に生まれ変わったと感じました。会場も大盛況で活気に満ち溢れていました。

今年も実行委員の皆さんの思いや努力の賜物と思うのですが、翻訳者の皆さんの参加する姿に活気を感じることができました。やはり自分が好きで飛び込んだ業界が活気づいているのを目の当たりにするのはうれしいことです。

わたしは開業してからまだ1年を過ぎた程度で、まだまだ学ぶことばかりです。それでも、エージェントでいろいろ経験することもあれば、フリーランスとして翻訳に取り組む中で感じることなどもあり、そんなことをこのブログで書いていきたいと思います。もしそれが、この業界の誰かのお役に立てるのであればうれしいなと、意義があるのかもしれないなと、そんなことも感じた翻訳祭でした。

ちなみに、わたしがブログを書くときはたいていビールなど飲んでいます。飲んだら仕事はしないのですが、ブログは書いてしまいます。飲みながら書くのはやめた方がよいのかもしれませんが、恐らく今後も飲みながら書くことが多いでしょう。仕事とは違い、ちょっとゆるくいきたいのです。ご容赦ください。


コメント

“第27回JTF翻訳祭に行ってきました” への4件のフィードバック

  1. Shira より:

    内容の紹介をありがとうございます。セッション1の内容はそのまま通訳にも当てはまると強く感じました。翻訳をしている方の表現には無駄がなくてさすがです。

    • kyasu04 より:

      コメントをいただきありがとうございます。仰る通りだと思います。柴田さんのお話は通訳と翻訳、ともに言葉をプロとして扱うものとして意識すべきことばかりです。通訳と翻訳の共通点として特に強く感じたのは、翻訳は音であり、声を出して読んだときにつっかえるのは誤訳、イントネーションがおかしいのは悪訳という点です。JTF翻訳祭のようなイベントはこのような貴重なお話を聞くよい機会ですね。
      今回の翻訳祭も聴講したいセッションばかりでした。Shiraさんも登壇されていたのですね。今回は聴講できませんでしたが、お話を伺う機会がありましたら幸いです。

  2. 未来堂 より:

    初書き込み、失礼します。

    翻訳祭のレポート、どうもありがとうございました。
    私が聴いたたプログラムと全く違うものでしたが、どれも気になっていたプログラムでしたので、とてもありがたかったです。

    私も翻訳祭レポートを書いている途中ですが、うまくまとめられず、まだアップできていません。早く書かなくちゃいけませんね 汗

    ブログ、いつも拝見しております。
    今後の更新も楽しみにしておりますので、よろしくお願いいたします。

    • kyasu04 より:

      未来堂さん、ありがとうございます。
      書くには書いたのですが、要点がまとまっていないような状態で恐縮です。
      わたしも未来堂さんのブログいつも拝読しています。参考になっていますよ。
      今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

コメントを残す