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翻訳とWeb制作を基礎から分かりやすく学ぶ

第26回JTF翻訳祭に行ってきました

26th-jtf-festival

11月29日火曜日、第26回JTF翻訳祭に行ってきました。個人的には昨年に続いて2回目の参加なのですが、例年にない大盛況との情報が開催前から。事実、通勤電車かと言わんばかりの混雑も体験してきました。

何はさておき、昨年に続いてまず感じたこと。翻訳業界の有名人がそこかしこに! とにかく興奮です。芸能人が100人1000人いるよりも、私にははるかに胸躍る時間でした。

私が参加したセッションは次のとおりです。

セッション1 「翻訳とはなにか〜足元を見直そう〜」
セッション2 「誰も教えてくれない翻訳チェック 〜翻訳者にとっての翻訳チェックを考える〜」
セッション3 「私たちは逃げ切り世代?−翻訳者に未来はあるのか」
セッション4 「実況、翻訳会社のトライアル採点」

今年は他にも気になるセッションがいっぱいでした。ぜひ生でお話を伺いたい、そんな登壇者の方も多く、参加セッションを選ぶのに悩んだことはおそらく皆さん同じだったのではないでしょうか。

さて、本題に入りますが、すでに詳細な報告をされている方や、素晴らしい考察を示していらっしゃるブログ記事がいくつも出ています。ここでは私がメモを取ることのできた範囲でかいつまんで、また自分の思うところを書きます。翻訳祭のレポートとしては不十分と思われますので、その点だけご容赦願います。

書いていることは登壇者の言葉そのままではありません。不足や言葉を足してしまっているところもあるかもしれません。また、情報を箇条書きで羅列していますので、つながりがなく、ブツブツと細切れ感があるかもしれませんが、この点もご容赦ください。だいたいこんな内容だったのだと伝われば幸いです。

セッション1 「翻訳とはなにか〜足元を見直そう〜」

「絵を描く」それが中心にあるセッションでした。
以降、記憶に残っているところ、また重要と感じたところです。

 

分からないから削ってしまう、あるいは情報を増やしてしまう、また一文一文などパーツは合っていても全体で見た場合に筋が通らなかったり論理が通っていないものはダメ。

訳語(訳文)Aと訳語(訳文)Bで迷った場合は、それぞれの訳文で絵を描き、原文の絵に近い方が正しいはず。

絵を想像できなければ訳せない。レシピはその好例。
(確かに、料理をまるでしたこともなく、またできない人が翻訳をしたレシピで思っている料理ができるとは思えない。)

 

書き手の頭の中が見える訳を目指して、(1) どんな人が書いたのか、(2) どんな状況で書いたのか、(3) どんな背景知識を基に書いたのか、(4) 文脈や文同士の関係、(5) 伝えるための書き手の工夫、などを翻訳者が考える。
※上記(1)から(3)は文章外

 

翻訳者のためのツールとは、「絵を描く」ことを妨げないツール。

辞書は訳語を調べるものではなく、絵を思い浮かべるためのもの。

訳語選択の悪例紹介。置換翻訳をしたと考えることもできる。
(置換翻訳と呼ばれるものは翻訳ではないが、機械が文字列を見ているだけであり、絵を描いて考えて判断しているわけではない。機械翻訳についても同様と感じた。)
絵を描くのをじゃましないツールと考えた場合、翻訳支援ツールも分節をつなげられない頭になる。
(全体を俯瞰できず、細部だけ見て絵を描く画家はいないよね、と納得。)

 

「統一」についての話。
用語や表記の統一は「絵を描く」ことを妨げないもの、「絵を描く」ことに役立つものでなければならない。

目的と手段を混同してしまうとまずい。

目的は読みやすくすること。用語統一は手段である。読みにくくしてまで用語を統一するのは間違い。

ひらがなと漢字のバランス、また読みやすくすることを考える。

原文で絵を描く、訳文ができたら絵を描く、このふたつが同じものになるかどうか。

 

質疑応答
クライアントから指定された用語を必ず指示どおりにすべきかという質問。

クライアントに説明する、クライアントを説得する。
分かってもらえる場合とそうでない場合があるが、何かを伝えようという姿勢は持つべき。
コミュニケーションをとることは大事。
統一すればよいというものではない。
→手段が目的になってはいけない。(CATツールが一役買ってしまっているかもしれませんね。)

 

画面サイズを上げることが、一番手っ取り早く前後を見やすくする方法。大きなモニターを2台3台並べる。(縦置き、横置き)

セッション2 「誰も教えてくれない翻訳チェック 〜翻訳者にとっての翻訳チェックを考える〜」

登壇者であるテリーさんはメーカーで品質保証業務に携わってこられた方。製造現場の5M(Material、Machine、Method、Measurement、Man)を導入するよう考えられたとのことでした。

会場に入る際資料が配られました。「翻訳品質保証マトリックス」というA3裏表のペラ。これがすごい。横軸に翻訳の流れ、縦軸に分類ごとの項目、それぞれのコマに詳細な確認項目が並んでいます。一通り目を通し、自分の行っているチェックと照らし合わせると、現在の状況と改善の方向性が見えてくると思われます。

もうひとつ資料があったようですが、あまりに多くの聴講者であったため足りなくなったようで、私もいただくことができませんでした。参加者は後日ダウンロードできると思われるため、楽しみにしています。

ひとくちに翻訳チェックと言っても、翻訳のチェック(流暢さ、読みやすさ)と作業チェックの2つに分けられる。

翻訳会社では作業のミスで評価されてしまうことが多い。
翻訳の質となると自分の感覚が基準であり、統一されたものがない。

翻訳のMaterialとして困るものに参考資料というものがある。用語集や表現集のように倣うべきものなのか、本当に単なる参考なのか、位置づけを事前に確認する必要がある。

ヒューマンエラーによるミスについて「注意します」「頑張ります」では改善は見込めない。

反復作業は手続き記憶(Procedural Memory)として定着してしまう。
一度に全てを見ようとしない。
チェックを分解する。思考過程が同じものをまとめる。単純な比較、用語集やスタイルガイドとの照合、読解など。
(私もエージェントでのチェックでは、多岐にわたる確認項目を一度に見ないようにしています。分類の異なる項目Aと項目Bを一度に見ようとした場合、意識があっちこっちに移動し、見落としにつながる。)

チェック箇所に色を付けるなどして知覚しやすくする「Easy to Notice」という考え方も有用。WildLightといったツールのサポートを利用して、人間の目で見る箇所を特定するなど、無駄を省き効率化する。

聴覚を利用したチェックも効果的。

最初からミスをしないのが一番。ミスがあったら「後でいいや」ではなく、すぐに潰す。

チェックの順番にも意味がある(あるべき)。
チェックフローの決め方のポイントは、一石二鳥を目指す。

対訳表の作成を基本として、必ず行っている。これを削ると経験から自信をもって納品することができない。

セッション3 「私たちは逃げ切り世代?−翻訳者に未来はあるのか」

このセッションの時、椎間板ヘルニアからくる左臀部から脚にかけての痛みがピークに達しており、集中力して聴講し、メモを取ることができませんでした。しかし、登壇されたおふたりの翻訳業の未来に対する想いだけは伝わってきました。わずかながらとったメモと記憶に残っている話のほんの一部を書きます。

翻訳に重要なことは勉強、自立、自己管理。

三種の神器は勉強会、SNS、〇〇。(メモが汚すぎて自分でも読み取れません)

中国語から英訳され、それをソースとしてドイツ語に翻訳する案件で、手順通り行うと手を切ってしまう。どう考えてもおかしいとおおもとの中国語を確認したところ、英訳の段階で誤訳されていた。(だいたいそんな話だったと思います。間違いがありましたら申し訳ありません。)

(エージェントの仕事で、ソースクライアントが日本語をライティングしてそれを社内の日本人(翻訳者ではない)が英訳、それをソースに多言語展開するよう依頼があるとき、英語がめちゃくちゃなことがあります。そんなことをぼんやり考えながら聞いていました。)

セッション4 「実況、翻訳会社のトライアル採点」

脚の痛みに不安があって一番後ろの端っこに座って聴講しました。幸い、90分間痛みは落ち着いていてくれました。

翻訳会社3社の方がパネリストとして登壇。一つの日本語原文に対して3名(A、B、C)の英訳が配布され、それに対して各社の採点ポイントが紹介されました。原文は環境関連の記事のようでした。

3社の採点のポイントを簡単にまとめると、原文を正しく理解して正確に訳出できていること、そのために必要なリサーチをできていること、簡潔な訳文で読み手に理解させる工夫や配慮がされていること、すぐに仕事を依頼できる水準であること(既存の登録翻訳者以上であること)となると思われます。

3名の訳例について結論から言うと、Aは3社とも合格、Bは3社とも不合格、Cは2社不合格で1社は一応合格というものでした。

 

3社合格した訳文Aは、まず日本語として読みやすい、細かなミスはあるにしても全般的に正確に訳出できていることが分かりました。

良い点として挙げられていたのは、長い原文を内容が伝わりやすいように2文に区切って適切に訳していること、伝える内容の順序を工夫していること、また原文が「Wednesday」となっているものを「2012年11月」にように訳出していることなどです。最後の点は、読者が記事を読むタイミングによっては「水曜日」という情報が何の役にも立たなくなり、年月の方が重要と判断したことが評価されていました。

実はこれに似た経験を最近したばかりでした。ニュース記事の翻訳で曜日が描かれていたのですが、やはり月日の情報を記載すべきと判断したのですが、入手した最終稿では曜日に直されていたのです。同じような曜日の記載がすぐ後の案件でもあったのですが、曜日のまま訳出しました。気持ちが落ち着かないまま納品したのですが、月日で訳出してその旨申し送るべきだったと後悔しています。次は自分が正しいと判断した根拠を申し送ろうと思います。

 

3社不合格した訳文Bは、訳語選択の配慮不足、読者に伝わらない(日本語として意味不明)、原文の意味を理解できていないなどの評価でした。一番は何を言っているのかまるで分からない箇所があり、私が見てもそれだけで致命的でした。

 

訳文Cは、一見すると読みやすい日本語に仕上がっているのですが、英語原文と付け合わせると誤訳があることに気づくというものでした。つまり日本語のライティング力はあるが、原文理解が不十分である可能性があるとのことです。一応合格を出した1社は、今後の可能性を考えて一度試してみたいとおっしゃっていました。

交流パーティー

交流パーティーへは初めての参加でした。最初はどうしてよいか分からず、居場所もなく困ってしまいました。

実はMemoQのMさんが会社の元同僚であり先輩で、声をかけてくださったので助かりました。

で、肝心の交流ですが、自分の力で挨拶をさせていただいた方は3名ほどでしょうか。その3人目に挨拶させていただいたのがスタジオコアラのしんハムさんで、初対面にもかかわらず、その後ずっといろんな方にご紹介いただきました。感謝しきれません。5年後10年後、自分が成長することができたら、私のようにどうしてよいか困っているような人に同じことをして恩を返したいと感じました。

また、挨拶させていただいている中で、大御所の方々のお話をすぐ隣で聞くこともできました。セッションの内容について突っ込んだ指摘をされている大先輩、その指摘に感謝をして改善すると約束される大先輩、翻訳に対して真摯にむかわれるそんな姿を拝見し、翻訳って、翻訳者って素敵だなと、また自分もそんな翻訳者になれるよう努力しないといけないと改めて感じました。

今回の翻訳祭は本当に参加してよかったと思います。実行委員のみなさん、登壇者のみなさん、ありがとうございました。また来年も翻訳者のための翻訳祭が開かれることを希望します。


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